長田神社、長田の石造物、摂取庵「子安地蔵尊」稲田桃再生栽培プロジェクト
稻田觀音禪寺、稻田八幡宮
長田神社（式内社意支部神社・論社）
長田神社は、祭神としては、今は誉田別命（応神天皇）、息長足姫命（神功皇后）、多紀理毘売命を祀っているが延喜式神名帳に列せられた意支部神社の論社である。式内社意支部神社は、平安時代は広大な境内を有した豪壮な神社であったが、ご社殿が焼失し現在地に遷座された。遷座された当時の地名「長田」を社名に冠したと思われる。長田の小字名に「意岐宮屋敷」と、その付近に「弓場」があり「意支部神社」のつながりを思い浮かべることができる。しかし、遷座の時期、改号などについて詳しい資料文献が無く不明である。
長田神社の大きな行事として歳旦祭、節分祭、夏祭り、そして秋季例大祭がある。特に、この秋季例大祭は１年間、平穏な暮らしができたことに感謝すると共に、これからの町の発展と地域の人の安全安心な生活、そして楽しく豊かに暮らしを願ってお神楽の奉納や４町会それぞれの”地車”の宮入がある。
長田神社の特徴として、本殿は大変美しい立派な銅板葺きの一間社流造りであるが、神仏混合の形式をそのまま残している珍しい神社であること。境内にある浄土宗の「摂取庵」は、慶長１３年（１６０８）の創建で、本尊は高さが９１センチメートルの木造地蔵菩薩で鎌倉時代の作とおもわれる。安産の守り神として特に知られており、地元に地蔵縁起も伝えられている。
もう１つは、鳥居で台輪鳥居（稲荷鳥居）とかいわれ柱頭に台輪がのっている。そしてその鳥居の笠木に銅板葺きの屋根が覆っている非常に珍しい鳥居である。（挿絵は山田修さんの作品です）また、境内には「おかげ灯籠」が３基残されている。
○問題。「明治のはじめの廃仏毀釈の嵐の中にあって『神仏混合』を守ることができたのはどうしてだろうか。」
近鉄奈良線 八戸ノ里駅 北へ１０００メートル
長田の石造物
長田には神社や寺だけでなく歴史のある古い由緒のある石造物も多く残されている。特に、おかげ灯籠が一つの地域に５基（長田神社境内２、一乗寺前１、福山家前１、村上家邸内）残っており大変珍しい。江戸時代には伊勢神宮の遷宮の行われる年に参宮すると平年より一層のご利益があるといわれ「おかげ参り」といって集団的な伊勢神宮参詣があった。まず、長田神社境内には、おかげ参りを記念して建てられた慶応３年（１８６７）の銘のある「おかげ灯籠」が一対、２基の台石には「おかげおどり」と書かれている。おかげ参りとは、ご存じのように江戸時代に起こっ
た伊勢神宮への集団参詣運動で、数百万人規模のものが、６０年周期に３回起こったといわれている。「伊勢参り」ともいわれていたが、おかげ参りの最大の特徴として、「抜け参り」といって奉公人などが主人に無断で、または子供が親に無断で参詣したことにある。幕府も公認のこの旅は、神恩のおかげ、温かく迎えてくれる沿道の人たちのおかげでお参りを果たすことができたことなどから、「おかげ参り」ともいわれるようになった。
特に、この年慶応３年はは幕末だが、全国的に広がっていた民衆運動「ええじゃないか」が流行った年でもあり、この村から大勢「伊勢参り」されたようだ。長田の村中にあるおかげ灯籠３基はいずれも天保２年（１８３１）の銘がある。また、有名な地蔵さんが幾つかある。境内にある摂取庵の子安地蔵は木造であるが他に、神社前の一乗寺の門前に祀られている石仏は、像の高さが１．２８ｍ。丸彫りの地蔵半伽像で台石には文久元年（１８６１）の銘が見られる。また、まうけ地蔵と天水地蔵が旧楠根川に沿って祀られている。もうけ地蔵は高さが３７ｃｍで、高さ２３ｃｍの台石に元文５年（１７４０）の銘がある。天水地蔵は蓮花を持った観音像で、昔、楠根川から引き上げられたもの。特徴として、像脇に「西 天王寺道 北 大坂道」「東 野中くわんおん道」と刻まれていることから道しるべの役割をしていたようだ。
観音寺摂取庵「子安地蔵尊」
長田神社境内の北側に小さなお堂「摂取庵」（摂取＝仏の慈悲の光が迷い苦しんでいる人を救う）があり、慶長１３年（１６０８）の創建で長田の人たちは祀られている地蔵菩薩を『子安地蔵』とよび、安産の守り神として崇敬してきた。明治の初期に「神仏混淆分離令」が発せられ、一時はお堂が移転するのではとという危機にさらされたが、現在でもしっかり長田神社の境内に残っている。本尊は木造地蔵菩薩で高さが９１センチメートルあり鎌倉時代のもの。安産の守り神として特に知られている。地元に伝わる地蔵縁起によると、「平安時代は寛弘年代（１０１０年ごろ）に恵心僧都（源信９４２～１０１７）が末世衆生救済のため地蔵菩薩を彫り、近江の片田浦にお堂を建て祀った。後、嘉禄年代（１２２６年ごろ）に子供が生まれない左衛門尉、土井有氏夫妻が山王二十一社に参籠して祈願すると、『地蔵菩薩に頼むべし』との宣託をうけ無事懐妊し、出産することが出来た。以来、子安地蔵尊と名付けられた。『懐妊の女人、産前産後の悩みなく安産すること疑いなし』といわれ信仰を集めた。正保２年（１６４５）新家村、観音寺に授けられ長田村に摂取庵を結び観音寺住職が兼務することとなった。」
例年、その年に誕生したお子さんの提灯が供えられる地蔵盆は大変に賑わいを見せているようだ。
懐妊されて人だけでなく、全ての人にとって安産やお子さんの健やかな成長を望まない人はいない。長田神社の祭神は、応神天皇、神功皇后で家内安全、安産の神様でもある。この子安地蔵尊が神社境内に祀られていることは、まさに「神と仏」が一緒になって人々の願いを見守ってこられたということでもある。
日本書紀によれば、イザナギノミコトに亡きがらとなった姿を見られ、恥をかかされたと言ってイザナミノミコトはさまざまな神に追わせた。イザナギは、黄泉の国と現世との境、ひら坂にさしかかったとき、「桃の実を三つ」取って待ちかまえて
撃退したという。享和元年（１８０１）に著された『河内名所図会』にも紹介されているが、江戸時代後期この河内平野、特に稲田周辺には桃源郷と言われるほど桃の木がたくさん植えられたいた。古代より、桃は邪気を払うという信仰があり、春ごとには花見をされ、また、桃の実はお盆のお供え物として重宝された。その桃は土地の名と取って「稲田桃」と呼ばれていた。実は昔話「桃太郎」に出てくる桃はこ
の稲田桃で果実も種も赤く先がとがっている。楠根リージョンセンターでは、この桃の栽培再生プロジェクトを作り、日下にの井上さんより種をゆずり受けて、１４年秋に播種し、１５年春に発芽、約１０ヶ月育てた苗を移植することとなった。
第１期移植の土地を第二寝屋川の堤に決め、役所の許可を取り、地域住民や楠根小学校の子どもたち約６０名のの協力を得て、平成１６年１月１８日、約７０本移植した。その後毎年植え増しされて４年経った現在は６００本にもなっいるそうだ。プロジェクトの代表の方は「楠根の人たち故郷を思うとき稲田桃を思い浮かぶことが出来るようになれば良いなあっ」と言われていた。「桃栗三年柿八年」の諺もあるが２年目で実をつけた木もあるそうだ。楠根小学校西側の第２寝屋川堤防沿いは春事のこの季節、稲田桃の花と菜の花、パンジーが競うように咲き乱れている。一見の価値有り。稲田桃の再生栽培プロジェクトは故郷の心づくりの再生プロジェクトでもあった。
けいはんな線高井田駅、ＪＲ高井田中央駅 東へ 第２寝屋川堤防沿い
稻田觀音禪寺
觀音禪寺は、曹洞宗の寺であり、元々妙心寺二世授翁宗弼（じゅおうそうひつ）禅師と大内義弘との協力で１４世紀後半に建立された大伽藍であったが、兵火に遭い焼失している。後、村人が大松の根元より掘り出した聖観世音菩薩を本尊とし、慶安元年(1648)に上方代官（のちの初代天草代官）の鈴木三郎九郎重成を施主に再興されている。実兄、石平道人鈴木正三を開基として現在に至っていること。現在の本堂は慶安元年建立されている。
鈴木正三（しょうさん）が出家する前、旗本として徳川家に仕えていたことから徳川家への報恩により、徳川大将軍三代（家康、秀忠、家光）を祀っている。このことは、萬治元年(1658)に不三が記した古文書に残されている。この古文書は、寺の再興の記述のあと五ヶ條の家訓があり、その最初に徳川大将軍三代諷経（ふぎん）の記述があることから、徳川家をおまつりするために再興されたものと考えられる。
秘仏の聖観世音菩薩は安産に霊験著しく、美濃岩村城主丹羽式部少輔氏定の妻が祈願し嫡男を無事出産された。報恩のため唐金の涅槃像・涅槃図と鐘楼門と梵鐘を、そして、境内に桃の木千数百本を寄進した。
稻田村一帯が桃で有名になり、河内名所図会にも紹介された。この桃が有名な稲田桃の起こりと伝えられている。また、その種を引き継いでいる桃の木が数本境内にある（市の天然記念物）。梵鐘は元禄三年の銘があり鐘楼門が建立された当時のまま吊り下げられているという。
ＪＲ学研都市線 徳庵駅下車
近鉄奈良線 河内小阪駅、八戸ノ里から徳庵行きバス利用徳庵バス停
稻田八幡宮と巨樹・イチョウ
本市の西側端に位置する稻田は、古くには新開地へ合流していた旧菱江川の西岸に営まれた集落であった。稻田村由来帳によると室町時代～江戸時代には１８軒ばかりがあった。永享３年（１４３１）年に古市郡にある誉田八幡宮から八幡宮を勧請された。八幡宮は字宮の町と呼ばれるところにあって祭神は、仲哀天皇、応神天皇、神功皇后が祀られている。
特にこの八幡宮で有名なのは、境内にある樹齢約５００年、樹高約３５メートル、幹周り５メートルもあるイチョウの古木である。村や神社の歴史を偲ばせる天然記念物として市の文化財に指定されている。八幡宮の創建が約５７０年前という。このイチョウの巨樹が樹齢約５００年。本殿前でひっそりと静かに控えている狛犬も創建当時からあったと言い伝えられている。イチョウと狛犬。いずれも人間の命には及びもできないほどの『長寿』。
イチョウは現在でも生き生きと躍動しており、ますます成長することだろう。なお、イチョウで幹周りが５ｍもある古木は、府下ではこのイチョウ以外に記録はない。
次に有名なのは、秋祭りでの地車と長提灯の宮入である。このことについては地元のホームページに詳しい。
また、神社入り口には、慶応３年（１８６７）の伊勢神宮へのおかげ参りに行った人たちによって参拝感謝の意味を込めたおかげ灯籠がある。
稻田八幡宮へは、ＪＲ徳庵駅から徒歩。又は近鉄河内小阪駅から徳庵行きバスで。
加納・鴻池へ